先月計画したが、生憎の大雨で中止にした比良山系で一番大きな明王谷の口の深谷へ、月を変えて行ってきました。 神戸FACとしては今年初めての沢登りでしたが、沢でのレスキュウ実践のハプニングもあり印象に残る沢旅となりました。 7月中旬頃までは雨が多く各地で洪水に見舞われ、例年にない降水量がありましたが、梅雨明け後は一転して猛暑日が続き沢の水も少なくなっていました。 明王谷もご多分に漏れず水量は少なめ、入渓から三の滝まで水量の多い時は2時間位掛かるのだが、そこはFAC、水量が少ないこともあり飛ばしに飛ばし40分で着いてしまった。 |
土山ICを午後9時過ぎに出発、高丸ICで田中さん、三宮で高村さんも加わり6名、生駒市から中村さんが坊村で合流し、細川休憩所で仮眠。 屋根付きトイレ完備の無料の休憩所を村人のご厚意で使わせて貰う。感謝。 アルコールも加わり山談義に花が咲く。経験者の数々のエピソードも飛び出し話の尽きることはないが、夜更かしは翌日に差し障るのでお開き。 翌日は、曇り空で肌寒くオマケに天候も下り坂、日の差さない薄暗い谷の冴えない沢登りとなった。 細川から朽木方面へ少し走り栃生発電所を過ぎた道端に路駐、少し戻って猪谷への林道を登る。 沢の水量は一寸少なめ。 堰堤を二つ越えた林道終点から灌木が繁茂する杣道を辿り、沢を横切る所で装備を調える。 |
参加者の顔ぶれを見ると私以外は精鋭のクライマーばかり、このメンバーならザイル無しでも大丈夫だが、雲水だけが一寸心配だ。 日頃の練習を休んでばかりで少しも進歩しないこの男、何時になったらクライマーに成れるのでしょうか。 言い出しっぺの雲水が光栄にも先頭を歩くことになる。 CLと言う役目は最後尾から顎で指示するだけで良かった筈だが、所詮は名ばかり管理職、いや違った名前だけCL、後事には一切構わず自分の心配だけしていれば良いと謂う気楽な沢登りだ。 出てくる滝は片っ端から直登、息も切らさず脇目も振らず濡れも厭わず、ただ三ヵ所を除いて(そこが一番肝心やろ!)は自力で登り切った。 |
ヒジキ谷出合二股までは、3ヶ所のゴルジュ帯があった。 最初のゴルジュは全く問題外、続く2番目のゴルジュは狭くて暗くオマケに流木で半ば埋まりお世辞にも綺麗とは言い難い渓相、その中に在って広く開けた岩肌に掛かる一条の滝が目の前に姿を現す。 さーてどこから登ろうかなと思案、滝壺は余り深くないので落ちたくはない所だ。 左は苔と草で滑るかも、右はホールドスタンスとも豊富にありスンナリ登れるが、最後の落ち口辺りが少し被っていて悪そうだ。 などと「下手な考え休むに似たり」思案ばかりで埒があかない。 ここで荒木師匠登場、左が一番簡単と苦も無くスルスルと登ってしまう、当たり前か。 ザイルをフィックスして貰いタイブロックで雲水も続く。 |
見た目よりも傾斜は少なく一度流れに近づく所で緊張したが後は意外とスンナリ登れた。 謂うまでもなくザイルの有無の差でしょうが、まだまだ修行が足りません。 3番目のゴルジュも最後に待ち構えている少し捻れたような滝、残置ハーケンも有るがここも雲水には登れませんでした。 またまた荒木師匠にお願いし、アンザイレンで上部へ簡単に抜け出てビレー解除続いて「どうぞ」とお声が掛かる。 ヤフオクで手に入れた一本三千円也のカムを回収し、タイブロックをセット。 ヨシ行くぞと気合いを入れ登り始める。 一段上がりハーケンに右足を乗せヌンチャクを掴み力任せに登ろうとするが如何せん身体が重い。 何とか右足はハーケンの上に乗ることは出来たが、左足を安定して置く場所が無い。 不安定な姿勢で『♪捜し物は何ですか♪見つけ難いガバですか♪左の壁も♪右のスラブも♪探したけれど見つからないのに♪まだまだ探す気ですか♪それよりそろそろ諦めませんか♪釜の中へ♪釜の中へ♪落ちてみたいと思いませんか♪うふっふー』状態。 |
そんな時こそ神様は実在するのです。 重い身体が突然軽くなってきた、この千載一遇の機会を逃さず足に力を込めて立ち込み2ピン目をクリアー。 それもその筈、我が体たらくを見るに見かねて、ザイルを引いてくださったのが神様の正体でした。ありがたやありがたや。 実はこの滝が第3のゴルジュの出口だったのですが、嬉しさで地形確認を忘れ、そのまま本流へ突入してしまいました。 この上にもまだまだ滝が続いてます。 ボルダー紛いのクライミングで次々に突破しましたが、疲れのためか腕や足の筋肉が痙攣を起こしそうになる。 |
右側の乾いたチムニー状を嫌い左側からチョックストン滝を越えようとしたが、後僅かで這い上がれない。 藻掻いていると有難いことに上からスーとお助け紐が降りてきた。 三度目の神仏のご加護かありがたや、何処の何方かは存ぜぬが、むんずと掴んでここを越えることが出来ました。 お助け紐の主は誰かと顔を上げれば、にこやかに笑った中村さんでした、感謝感謝。 沢筋も至って穏やかになり明るくなってきた。 入渓してからずっと休み無く登ってきたので、ここらでお湯を沸かして暫しのコーヒータイム。 辺りを見渡して「ん?」慌てて遡行図と地形図で現地確認。 支流のヒジキ谷へ入るつもりが本谷へ入った様だ。 休憩の後もう少し登ってから二股へ戻るかを決めるため出発。 |
暫くで沢は二股に出た、右の沢には見覚えのある赤いテープ(以前私が巻いた物)が木に巻き付けて有るではないか。 あちゃー、ここは「コメカイ道」が横切る地点だ。 ヒジキ滝は、この道を登り尾根を越えた隣の谷に掛かっているのです。もう一度滝場を懸垂で降り二股まで戻らなければならなくなった。 衆議一決、このまま尾根を越えてヒジキ谷まで歩きヒジキ滝だけは見て帰ることになった。 比良西面の谷の中では一番高い滝らしい。 斜面の中腹に在るためか水量は今ひとつの2段直瀑、水量の多い時なら豪快な姿だろうと思うが、今は迫力無し。 滝の前で記念写真を撮り本谷へ戻り、靴に履き替え「コメカイ道」を辿って地蔵峠に登り着く。 |
この道は、安曇川の人々の生活道路で、高島町畑へ米を買いに通ったのでしょう。 シッカリと踏込まれ緩やかな傾斜で峠へと導かれる。 辿り着いた地蔵峠には、人々の安全を祈って石仏が安置され、往時の賑やかさを物語っている様だった。 現在は、安曇川の村井から横谷トンネンルを潜り高島町畑への自動車道が開通したため、生活道としての役目は終わったが、近年整備され再びハイカーに利用されるようになった。 残念なことに、この尾根までも林道が開通し、峠付近の景観も変わってしまった。我々も仕方なしにこの林道を利用して村井へ降りた。 車を回収し、朽木の温泉で汗を流し、渋滞の湖西道から名神を経て帰ってきました。 9月にしては肌寒い中の沢登りであったが、入渓から三つのゴルジュを抜けるまでに要した時間は1時間20分、昼食時間を含めて下山まで5時間と謂うスピード、精鋭揃いのFACならではの例会山行でした。 |
参加者 荒木・高村・中村今・田中・陰山・前川・雲水(記録) 計7名 |