先月計画したが、生憎の大雨で中止にした比良山系で一番大きな明王谷の口の深谷へ、月を変えて行ってきました。 神戸FACとしては今年初めての沢登りでしたが、沢でのレスキュウ実践のハプニングもあり印象に残る沢旅となりました。 7月中旬頃までは雨が多く各地で洪水に見舞われ、例年にない降水量がありましたが、梅雨明け後は一転して猛暑日が続き沢の水も少なくなっていました。 明王谷もご多分に漏れず水量は少なめ、入渓から三の滝まで水量の多い時は2時間位掛かるのだが、そこはFAC、水量が少ないこともあり飛ばしに飛ばし40分で着いてしまった。 しかし、口の深谷、奥の深谷、白滝谷の水を集めた三の滝、釜には満々と水があり流れも速い。朝一番に泳ぐのを躊躇し滝の左側を登攀することに決定、荒木さんが早速リードで草付きの岩壁に取り付く。 |
残置ハーケンにランニングを取りながら2m程登るも上部が悪く右へトラバース、我々もどうなることかと固唾を呑み見守るなか落水一度ながら上部へ登り切り解除のコールが掛かる。 続いて竹中さんが登り雲水の番になる。被り気味だが行けると思い取り付くが滑る岩にあえなく落水。 見かねた中村さんが一段上にお助けを掛けて貰い、空荷でやっと登ることが出来た。棘のある草が多くトップはその処理の方が大変だったと思われ、いつもながら感謝感謝。 上流は平凡な流れとなり口の深谷出合へ到着、暫し休憩。 口の深谷は今回で2度目となる沢で、前回の印象は兎に角長かったことぐらいでした。 狭い出合いから谷を進むと早速第1ゴルジュとなり小滝を2つ無難にこなすと、「くの字」に曲がった3段の滝が立ちふさがる。 滝の右から取付き最上部出口がスラブ状で手掛かりが少なく悪いが、ここも荒木さんがトップでザイルを張ってくれました。 |
ここを登るとき気づいたのだが、いつの間に落としたのか「タイブロック」が無いことに気付く、仕方がないので最後尾でザイルに確保されて登りました。 続いて狭い廊下状の釜を持つ10m滝、切り立った岩壁を残置ハーケンにスリングを掛け登り切る。 この時二人組が現れ、我々の状況からみて時間が掛かると思ったのか、あっさり巻いて行ってしまった。 結果的には、この高巻きがこの二人組にとっても幸運でした。 雲水も一度トライしたが2度落水、時間を掛けても登れるか判らないので、早々に見切りを付けて高巻くことにした。 少し戻って右岸を高巻く、途中痩せ尾根の上から見下ろすと中村さんが登攀中一枚写真を撮る。 |
上流は一旦平凡な流れになり昔の林道が沢を横切る。 10mCS滝、綺麗な滝等が掛かり、楽しみながら遡行を続け、一本立てる。 更に遡行を続け廊下の奥がトンネンルになった10mの滝に着くと、先ほど高巻きで我々を追い越していった二人組の一人が、右岩壁を登攀中滑落して怪我をしている所に遭遇、救助の協力を求められる。 滑落の時顔を打ったようで顎や唇から血を流し、両足とも捻挫したようで足首にテーピングしている。 この地点で沢登りを中止して救助に当たる。 荒木さんの指示で確保のザイルを張ったり、両脇を支えながら、少しずつ引き上げを開始。 時間は掛かるがレスキュウポイントまで移動させないとヘリコプターの要請も出来ない。 |
こうなると、何でもない小さな滝でさえ越えるのが難しく、傾斜した斜面のトラバースもザイル2本で確保し少しずつ進むしかない。 本人も痛いのを我慢して必死で歩いている。 そしてやっとこの谷最大で最後の2段20m滝まできた。 これを越えると後は平凡な流れとなり一般登山道が横切る地点である。 以前来たときもこの滝の落ち口左を登る所が緊張する所だったが、今日の状況ではここの通過が最大の問題だ。 3ピッチに切って一段一段引き上げるしかない。 2ピッチ目の落ち口の通過は、左岸に確保地点を置き、ザイル2本で引き上げるのだが、此処でのスリップは即滝下転落になる所、サポートする者もセルフを取り慎重に引き上げる。 みんなの連携で無事滝を越えることが出来、河原で一息入れた。 |
ザイルを仕舞い、平流になった沢をゆっくりと歩き、武奈ヶ岳南西稜のわさび峠と中峠を繋ぐ登山道が横切る地点に着く。 ここは比良山系のへりによるレスキュウポイント「中峠7」となっている所、もう一人が携帯の通じる所まで連絡を取りに走る。 救助要請があってからここまで約4時間、時間も夕方が迫り、余りグズグズは出来ないので、後をもう一人に任せ我々も下山を開始。 わさび峠へ沢を詰め西南稜に上がり御殿山に着くと丁度携帯で救助要請中、無事連絡も取れた事を確認し、太陽が西の稜線に隠れるまで競争の下山となる。 何とか日没までに明王院へ下山、車に戻り着替えを済ませ、奈良へ帰る中村さんと別れ往路を戻った。 私にとっては、登れない滝を3箇所登れました(後半は高巻き)が、それ以上に、滅多に経験することの無い、沢での怪我人救助の実地体験をしたことで記憶に残る沢登りとなりました。 勿論怪我や事故は無いに越したことですが、岩場や沢での救助訓練も、岩登りや沢登りをしている者にとっては必要な事だと感じた次第です。 |
参加者 CL榎本・荒木・中村(今)・高村・竹中・前川(計6名) |