大峰山系上多古川沢登り

上多古林道  残暑も幾分か和らぎ秋の気配が感じられるそんな時期、秋雨前線の合間を縫って大峰山系の上多古川へ沢登りに行ってきました。
 大峰・大台と言えば年間降雨量が多いことで知られ、その雨で深く浸食された沢が沢山存在し、北アルプスの名だたる沢にも負けないそんな所です。

 大峰・大台の沢の特徴は、南へ行くほど沢グレードは高くなります。
 今回選んだ沢は、京阪神から近く、比較的大きな滝が懸かり、泳ぎが無く、滝の直登をしなくても高巻きで登っていける中クラスの沢です。
 上多古川は、山上が岳の東北面の水を集めて吉野川へ合流し、その本流を遡ると奥駈けと呼ばれている稜線に到達しますが、そこは世界でただ一つ「女人禁制」の伝統を守る大峰山。
 女性が参加する場合は、少し手前で左の阿古滝を登り、古くから「阿古滝道」と呼ばれている杣道を下山するルートを取ることになります。

上多古林道終点  17日の夕方稲美町でもバケツをひっくり返したような夕立に見舞われたが、出発前には雨も上がり午後9時職員駐車場に集合出発、阪神高速を三宮で一旦降りて高村さんを迎えに行く。
 渋滞もなく大淀町の道の駅で休憩し、川上町役場道の駅に到着、早速テントを設営し高村さん差し入れのビールでいつもの小宴会。

 翌朝6時過ぎには生駒から中村さんも到着、2台に分乗し少し早めに出発したが上多古林道途中の分岐で上谷方面に一台が向かってしまい、呼戻すのに時間を費やしたが、無事林道途中の道の膨らみに駐車し、予定を少し過ぎて出発した。
 舗装が切れると杉の伐採が散乱し、道が抉られ、車では進めない林道を歩き、終点の広場に着く。
 ここは矢納谷との合流地点で、鉄製の編目橋を渡り本格的な山道に変わる。

思い思いに岩を登る  阿古滝道は、矢納谷と上多古川とに挟まれた尾根道で良く踏まれた杣道。
 山の神の祠から右に進み天竜の滝(20m)を越えた所から入渓。
 右から茶屋の谷が合流する「ブナ又出合」までは小さいながら釜を持った滝を自分の思うルートで登って行く。
 時間を短縮する時は、阿古滝道をもう少し上まで登りブナ又出合への分岐から杣道があるそうだ。

 いよいよ小さなナメを過ぎると本格的なゴルジュが始まる。
 最初はこの沢の名前と同じ多古の滝(8m)、続いて2条に分かれて落ちる双龍の滝、そして本谷最大の洞門の滝(40m)が懸かっている。
 洞門の滝は登れないので右から巻く。
 滝上には鈴鹿の滝洞谷を一回り大きくしたような水流で大きく抉られた洞窟の様なもの凄いS字状の廊下が続く。

洞門の滝  河原を進み右に回ると2段12mの大きな釜を持った滝が懸かる。
 前川さんが堪らず釜へダイブ、続いて本岡さんも気持ちよさそうに泳ぐ。
 勿論この滝も登れません。
 少し戻って左から巻く。
 相変わらずゴルジュが続き、2m滝のすぐ後ろには正面からは見えないが煙突の滝(20m)が懸かる。
 この滝も登れないので左側から巻く。
 巻き道は、煙突の滝の真上の小さな尾根の乗越しから懸垂で降るのだが、このまま降りると滝壺に降りることになるので、すぐ上の10m滝も一緒に巻かなくてはならない。
 懸垂を失敗すると大きくハングした岩壁が待ち受けており、空中で宙ぶらりんになり登り返すのは大変だ。
 中村さんが慎重にルート工作を行っている間急斜面で待機。
 ザイル2本を繋ぎ、振られ防止の支点を作り、斜めトラバースで沢身に降りるルート完成。

ルート工作  登りならタイブロックが有効だが、降りには使えないので、カラビナを通しゴボウで降る。
 全員無事沢に戻ることが出来、ザイルの回収もスムーズに終わったが、時間が掛かりすぎてしまい予定時間を大幅に遅れてしまった。
 続いて現れたのが大きな釜を持つ多治良淵(15m)、これは左から巻く。
 ここの巻き道は、左から20mの滝を懸けて流入するルンゼの左を登り、滝の裏をシャワーを浴びながら抜け、ヌルヌルの急斜面をよじ登り、小さな尾根を越えて沢に戻る。
 これでやっと多古の滝から続いていたゴルジュを抜け出せたことになる。

 通常なら沢グレード2級程度ですが、昨日まで雨に降られ水量も多くなっている為3級位にはなっているでしょうか。
 人数も多いので、尚更時間が掛かってしまった。

竹林院谷出合  暫くは明るい岩間の滝が続くが、難しい所はない。
 お腹も空いてきたので、日の差す明るい河原で昼食を摂り休憩する。
 時間も押しているので余り長居をせずに出発、すぐに竹林院谷出合に着く。
 右から流入する谷の奥に、樹幹を通して大きな岩壁に六字の滝(50m)が懸かっているのが僅かに見えた。
 なおも岩間の滝が続き傾斜もきつくなってきた。
 尚も岩間の滝が続き、行く手に岩壁が覆い被さって来るようになり、阿古滝(50m)に近づいたようだ。
 いつの間にか本谷から分かれて阿古滝谷へ入ったようです。
 滝登りに夢中になっていて分岐を見落としてしまった様です。反省!。

阿古滝  今回の沢登りの参考にさせていただいた「サワナビさん」の遡行図とは滝の巻き方が何カ所か反対で、以前にも良く来られている中村さんの巻き方の方が合理的で巻き道もしっかりとしていました。
 いよいよ最後の阿古滝が圧倒的な高さと幅で目の前に立ちはだかります。
 参考にした記録を見ても水量が少なく、途中で霧状になり落下している写真が多いが、今回はしっかりと下まで届いてました。
 さて最後の巻きですが、記録の多くは滝の左の家程もある大岩と岩壁の間を岩壁に沿って一旦降り、岩壁と岩壁の間の斜面を登ると15分程で阿古滝道に出ると紹介されています。
 雲水も途中まで確認しましたが、岩壁に沿って随分下まで降らないとその巻き道は使えません。我々は中村さんの巻き方で阿古滝道へ登ります。
 滝の前を横切り、右斜面を岩壁まで登り、岩壁の弱点を突いて岩登りで突破しました。
 安全を期してザイルを張り、タイブロックで無事登り切りました。

多治良淵(15m)  時間も大幅に過ぎているので急いで降らなければなりません。
 中村さんの記憶と赤テープの目印を追いながら降りました。
 何回か沢を渡り、急な斜面のトラバースありで気を抜くことは出来ません。
 一度だけ沢を渡る所で迷いましたが、順調に降り、植林帯を抜け沢の音が大きく聞こえてくると林道終点間近です。
 阿古滝上から1時間半程で降ることが出来、暗くなる前に無事戻れました。お疲れ様でした。
 残念ながらこの時間では近くの温泉は全て終了しています、以前小生が行ったことのある「秋津荘」なら遅くまで営業していたのを思い出し、ギリギリの午後8時ほんの少し前に辿り着き、冷えた身体を暖かい温泉で洗い流し、帰路途中で「王将」の焼き餃子を食べて、午後11時無事帰って来ました。

快適に沢を楽しむ  昔は大勢の入渓者を迎える人気の沢でしたが、最近は沢登りをする人が少なくなったのか誰にも会わず我々だけ貸し切り状態の上多古川でした。
 大峰の沢は、滝も大きく、岩も大きく、高低差も大きく、何度行っても素晴らしい所です。
 この次は、秋の紅葉と殆ど濡れない沢(ルンゼ)登りに行きませんか?

 後日談
 台風12号のもたらした雨で、十津川流域の至る所で山が崩れ大災害を被りました。大峰・大台の綺麗な沢もおそらく大きく変わってしまったと思います。
 被災された方々には大変お気の毒で、大峰大台の沢をこよなく愛する者として、心からお見舞い申し上げます。

  コースタイム
第1日目(27日):稲美町21:00→三宮21:50→阪神・近畿道・南阪奈・道の駅大淀→杉の湯24:00(仮眠)
第2日目(28日):杉の湯06:50→上多古林道P7:56→林道終点8:10→双竜の滝9:13→洞門の滝9:28→幸次郎窟→煙突の滝10:25→多治良淵11:50→竹林院谷出合13:45→阿古滝前14:55→阿古滝上15:35→多治良淵分岐16:48→林道終点17:30→P18:00→杉の湯18:30→秋津荘20:15→往路を復走→三宮→稲美町23:00


 山行期間:2011年8月27日~28日

参加者
  CL中村・SL荒木・高村・鷲尾・本岡・前川・雲水(記録) 計 7名