数年前から2度も計画したが大雨や台風の来襲で実現しなかった大台山系南部の堂倉谷、念願叶って登ることが出来ました。 沢としては3級+のグレード、渓谷探勝で有名な「関西の黒部」大杉谷の上流に在りその本流と目される谷で、南部域では東の川と双璧をなし何れも入渓者を多く迎える名渓です。 平成16年9月29日の台風で記録的な雨量を記録。大杉谷登山道でも土石流の発生で現在も通行止めになっている。 稲美町を早朝に出発、大阪市内の高速道路が渋滞する前に通過、南阪名道経由で橿原・R189を南下、大台ヶ原ドライブウェイの終点駐車場に到着。 天気は快晴。早速沢装備を身につけ、観光気分で遊歩道を日出が岳まで登る、南側は雲が多く尾鷲湾は望めなかったが北部の山々は遠くまで望めた。 |
第1日目 頂上から大杉谷へは探勝路を降る。通行止めの影響か辿る人も少なくなり元の自然に戻るようでフカフカの苔に覆われた登山道を堂倉谷避難小屋まで降り一本立てる。避難小屋の下の林道までは良く整備が行き届いていたが、この先からは沢登りのパーティーくらいしか利用しないのでかなり荒れている。沢の音が聞こえてくると大杉谷と堂倉谷の出合に到着。平成16年の台風の影響で堂倉谷に架かる吊り橋も冠水したそうで大きく傾いて通行禁止となっている。橋の袂で沢靴に履き替えいよいよ遡行開始となる。 目の前には大きな釜に堂倉滝が堂々と落ちている。写真で見た滝と比較して水量は少ないようだ。 吊り橋を乗り越え対岸の探勝路を下流へ進むと次の吊り橋が架かっている所にでた、沢へ降りる巻き道は手すりも付いた作業道をガレた斜面に確認、これを辿る。尾根に出るとモノレールの出発地がありその先のルンゼを降る。 下降用のトラロープも下がっているが使うほどの傾斜ではない、落石に注意をしながら降りる。 降りたところは磨かれたナメが広がる。 |
ナメを登ると7m滝が釜に落ちている。ヘツリが出来ないので泳がなければならない。いきなりの泳ぎ、思っていたより冷たくはない。 続く30m斜瀑は傾斜もあり直登不能、大きく巻くところ。出来るだけ小さく巻こうと考え滝壺に近づくため更に泳いで取り付く。巻き道の踏み跡もなくガレを登らされるが出口が悪くシュリンゲを使って登り切ると踏み跡が現れる。 ここは手前から大きく巻くのが正解、余分な労力を使ってしまったようだ。踏み跡を伝って上流に降りる。 この辺りは「中七ツ釜」と呼ばれており次々に大きな釜が現れる。 泳いだりヘツッたり徒渉したりと忙しい。 苦労して登った先が切れており下降不能になることもあり、ルートの取り方が難しい、まるで迷路のパズルを解くような遡行が続く。 大岩のゴーロを進むと左岸から沢が流入する、ビバークの予定地アザミ谷出合である。 時間もまだ早いので明日のことを考え先に進むことにする。 |
左右の岩壁が切り立ち廊下状の流れの中に大きな釜が幾つもある所に出る。釜の縁に立って中を覗くと深い緑色だ、真夏なら飛び込んでみたいような不思議な景観だ。 この一帯は「奥七ツ釜」と呼ばれている所だ。釜の中には大きな岩が沈んでいる物もある、増水の時この岩が釜の中を回転し周りの岩を削り次第に大きくなって出来たようだ。それにしても不思議な光景だ。 尚も遡上を続けると、奥七ツ釜の最後に出てくる8×15m斜瀑が懸かる。右岸を登ろうと取り付くが上部が悪く滑り落ちそうだ。 少し戻って巻く。割合しっかりした巻き道があり難なく落口のすぐ上に出る。 遡上するに連れて大きな岩が減ってきたようだが難しい所はない。水流に磨かれた滝は手懸かりが少なく、靴のフリクションとパーミングだけで苦労して登ったが、長い淵の上に出てしまい降りれなくなった。 対岸を巻き登った仲間にザイルを投げてもらい懸垂で水中に降りる羽目に。 前半部の最後を飾る15m斜瀑が懸かる。スラブ状の左岸にハーケンが連打してあると紹介された滝であるが、スリングも掛けてあり難なく越える。 |
最後の斜瀑を越えると平凡なゴーロが続きやがて堰堤に突き当たる。 ここは右岸から高巻く、時刻も夕暮れが近づきねぐらを探しながらゴーロを行く。 左岸に良いテン場を見つけたので本日の行動を打ち切る。 好日のSさんは沢で泊まったことがなく今回初体験、勿論タープの下で寝ることも初体験。折角の機会なので快適な野宿を体験して頂きましょう。 沢での野宿といえばまず焚き火、寝床作りと料理は任せて頂き、早速薪集めをお願いする。雅生さんと一晩中燃やせる量の流木集めをお願いし、富子さんと夕食の準備を始める。 夕食は、焼き肉丼に春雨のワカメスープと海草サラダ。お味は如何だったでしょうか?。 暗くなる前に薪に火を着け、濡れた衣服を乾かす。満天の星を期待したが、時折パラッと雨が落ちてきた。寝ている間も何度か雨脚が強くなったりしたが焚き火が消えることはなかった。 |
第二日 小雨 ゆっくり目に出発。すぐ上で林道が横切る。以前計画した時この橋の上から沢を眺め、川幅いっぱいに流れる濁った沢を見て諦めたことを思い出した。 平凡な流れが続く、右岸から地池谷、左岸からミネコシ谷を合わせ広い河原の二俣に出合う。同じような大きさだが、左の沢の方が川床が低い本谷、左へ進む。川幅も狭まり薄暗い中を進むと小さい滝が現れるようになり、暫くで左岸から樹木に隠された出合の石楠花谷が流入。 出合を過ぎるとゴルジュの中に幾つもの滝を懸け、一気に高度が稼げる。 傾斜もきつくなり流れも細くなる。岩間4m滝、トユ状2段8m滝と続き、源流部最大の2段25m滝を迎える。巻くことも出来るのだろうが雨で濡れた状況では直登より難しい。安全を期してここはザイルを出す。 ここはクライマーのSさんにトップを任せる、カムと残置ハーケンを使い1段目を上がりピッチを切りザイルをフィックスして二人を上げる。 もう一段目はフェイス状からシャワーぎみに抜ける。 今回ではザイルを使ったのはここだけ、次の狭いクラック状の滝はバンドを伝い簡単に行けるが、抜け口が悪くシュリンゲを出した。 これより上部は傾斜も落ち快適に滝をクリア、奥の二俣を過ぎると源流部の様相。水が切れる頃小笹の茂る斜面に取り付き獣道を辿る。 |
風倒木が多くなる中を上り詰め広い正木が原の一角に着く。笹原を僅かに降ると尾鷲辻への登山道に出た。 尾鷲辻からは遊歩道をとおり大台の駐車場へ無事帰還。ビジターセンターの軒先を借りカッパに着替え五色の湯へ。 念願だった堂倉谷遡行、前半は晴天、後半は雨でしたが流石に大台の沢登り予想以上に素晴らしい沢でした。 野宿初体験のSさん、如何でしたか。 無理矢理お付き合い頂いた雅生さん、富子さん、有り難うございます。まだまだ近畿には素晴らしい沢が有ります、来シーズンも是非お付き合いください。 |
参加者 CL雲水・森安・菅・好日Sさん 計 4名 |